第109章 再び通報

彼は不意に手元のパドルを掲げ、低く言い放った。

「2億」

そのひと言で、会場の客だけではない。隣にいた水野佑奈まで、信じられないものを見るような目で川西拓海を振り向いた。

「何してるの?!」

声を潜め、川西拓海のほうへ身を寄せる。

「それに、誰が2億なんて言っていいって言ったの。割に合わないでしょ」

場内は水を打ったように静まり返った。

まさかここで、川西拓海が競りに加わるとは誰も思っていなかったのだ。

有川紘樹の顔色が、すっと沈む。

川西拓海が水野佑奈をかばうように前へ出た、その姿勢を見た瞬間、さらに値を吊り上げようとした――が、そのとき、後ろに控えていた山下良平が一歩前...

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